化学業界について

業界の動向

顕微鏡をのぞき込む2人の中年男性
円高や原料高が足かせとなってここ数年厳しい状況となっている化学業界ですが、
ここにきてさらに加速する円高と東日本大震災による需要激減といった激震を受け、事業そのものの構造改革が迫られている業界の一つです。
業界規模としては、21兆5,286億円、労働者数は161,747人、平均年齢39.7歳、平均勤続年数15.1年、平均年収583万円となっています。
化学業界というと、理系の学生からの人気が非常に高いことでも知られていますが、今の激しい企業戦線においては今後もどれだけ高付加価値のついた高品質の商品が世の中に出せるかということが企業の存続をかけるキーポイントになるということは間違いありません。
研究開発分野の役割が医薬業界や電気業界と同様に非常にキーポイントとなる業界ですから、理系学生にとっては魅力もやりがいも責任もある業界となるのです。
高機能製品や電子材料など経営資源をシフトするとともに、経営のスリム化も図りながら何とか成長軌道にのろうとしています。

今後の展望

国内には、ニッチな市場で世界的なシェアを持つ企業も数多くあります。
例えば、日本合成化学工業はプリビニールアルコールの製造に成功し、そこから発展させて現在では液晶ディスプレーで必ず使用される偏光板用フィルムを開発しており、このフィルム製造技術は世界的にも非常に高く評価されています。
実際、このフィルムが生産可能なのはクラレと同社のみです。
他にも紙おむつに使われている高吸収性樹脂(SAP)の世界トップメーカーである日本触媒など、世界に誇るべき企業が国内にたくさんあります。
今後も事業の選択と集中によって、より投資を加速する事業と撤退する事業とを見極めることが経営者には必要とされることと思いますが、その過程で企業合併や買収のスピードも加速されていくことが予想されています。
実際、三菱ケミカルホールディングスが日本合成化学工業を連結子会社化するなど、電機業界のように、大手総合化学メーカーがグループ化されたり、営業譲渡、企業合併するという例もでてくることがあり、再編の波は避けられない状況にあるかもしれません。
日本全体としての競争力を高めるためにも、今後さらに電子材料分野へのシフトは必須事項であると考えられています。
化学メーカー各社は現在市場を席巻しているスマートフォン向けの光学フィルムやガラス代替樹脂、二次電池向けに電解質や添加剤などの製品開発にも注力しています。
今後の日本の産業、経済発展の核となってくる業界なだけに、非常にその企業が秘めている技術力もさることながら、今後に期待されるところも大きいです。
成長市場を的確に見極める以上に、新しい市場を自ら創出するような開発力が求められています。
電子材料で今後成長が期待されている有機ELや有機薄膜トランジスタなどの「有機」分野はまだまだ未開な部分が多く、科学メーカーが得意とする合成の技術を生かして今後の成長分野へのシェア争いも激化していくことと思います。