証券業界について

大きなターニングポイントの局面に立つ証券業界

平成28年3月期のこの業界の決算状況を見ると、対面での営業がメインである野村HD、大和証券グループの大手2社とマネックスグループなどネットを使ったオンライン証券で、収益の明暗がくっきりと分かれました。
野村HDの収益が前年度に比べてマイナス4割以上、大和証券Gがマイナス2割以上と軒並みマイナスを記録しました。

対するオンライン社はSBI証券の約4割増を始め、多くが前年を上回ったのです。
特に、野村HDは、平成28年1~3月期がマイナスの赤字決算となっており、オンライン証券と対照的になっています。
この収益の差の理由は、対面とオンラインの業務体質の違いが挙げられます。
ネットで取引を行うオンライン証券の顧客は若年層に多く、市況が悪化しても売買高が低下しにくいという特徴があります。
さらに、対面証券に比べ店舗のネットワークは不要であり、人件費や設備投資が少なくて済む点も大きいです。

リーマンショック以降、近年は、株価の変動が大きく、株式市場の乱高下を嫌う対面証券のメインの顧客である比較的高齢の投資家達が株式市場から離れたことも収益悪化の一要因に挙げられます。

IPOの引き受け業務でも苦境に立つ対面証券

IPOとは、新規公開株のことで、具体的には、創業者・家の保有する自社株を一般の投資家に売り出し上場することを指します。
この業務は株の新規発行に関する諸手続きや投資家に対する販売手数料によって多くの収益が見込まれることが魅力なのですが、この分野でもオンライン証券が存在感を示しつつあります。
平成27年度のIPO業務の引受は、金額ベースでは野村HDがトップですが、件数ベースではSBI証券が野村HDを抑えて首位でした。

対面証券各社が注力するファンドラップ

日経平均はアメリカのダウ平均の値上がりなどを受けて、2017年初夏に2万円を回復したのですが、今後の見通しはわかりません。
そもそも足元の国内企業の収益見通しが明るいというより、アメリカ市場に引っ張られる形で他動的に買われた感も否定できないので、見通しは分かれているのです。

対面で国内首位の野村HDは赤字の海外展開の縮小でコストカットを目指します。
一定の効果は見込まれるものの、将来的な収益面では本業の改善が期待されます。
また、大和Gは保有株式の売却益や日銀の大規模な金融緩和で国債の売却益で一時的な収益は見込めますが、将来的な収益の柱はやはり何か別のもモノに求める必要があります。
そこで、多角的に安定した収益源を目指す対策として、ファンドラップが注目されています。

ファンドラップとは証券会社が顧客に適した資産の運用・管理のスタイルを提案し、顧客とともにリターンを目指す運用スタイルです。
証券会社はその手数料を得る、いわゆる「投資一任運用商品」と呼ばれる新しい形の資産運用サービスです。
資産運用をプロ任せで一方的に一任するのではなく、証券会社が顧客にヒアリングなどを行いながら顧客に合う資産運用のスタイルを提案し共に作っていき、定期的に運用状況を報告しサポートをしていくというビジネスモデルです。