居酒屋業界について

踊り場の局面に差し掛かる居酒屋業界

お酒のつまみとなる簡単な料理と共に安価に酒を提供する大衆的な酒場である居酒屋は昭和55年頃から学生を中心とする若者や女性客をうまくキャッチできた大手居酒屋のチェーン展開により急速な発展を遂げました。
しかし、バブル経済の崩壊と時期を同じくするように市場規模は平成4年の1.5兆円をピークに減少を続けます。
この市場縮小の理由として、消費者ニーズの変化やお酒の飲酒量の減少が挙げられ、特に、近年の1人当たり飲酒量の減少は各世代に共通して見られます。

他店との差別化の為オリジナリティを模索する大手チェーン

消費者の嗜好が時代とともに変貌する状況に対処すべく大手チェーンは、ターゲットを絞った業態への転換を急いでいます。
ワタミ株式会社はかつて好評を博したチェーン展開の店舗「居食屋和民」から離れた客層を再び呼び戻す策として、仲間同士でゆっくり会話をしながら料理とお酒を楽しめる「語らい処坐・和民」に経営資源を注力します。

また、株式会社つぼ八は、「つぼ八」の全国展開で昭和55年以降、家族連れや女性客のキャッチに成功しました。
その後離れてしまった女性客層に振り向いてもらえるよう、比較的経済的に余裕のある女性客を狙った一つ格上の店舗「茜どき」の店舗展開に注力しています。
しかしこれらの策は、売り上げの減を止める一定の成果としては効果が見られたものの、決定打として十分には機能しておらず、更なる策の追加が求められる状況です。
ターゲットの世代間でニーズは明らかに異なる傾向があるため、これまで居酒屋成長の立役者であった団塊の世代に注目して、ニーズとチェーン展開の戦略を考えてみます。

団塊世代は居酒屋に個性を求めている

ある意識調査では、戦後のベビーブームに誕生した団塊世代の居酒屋を利用しない人の割合は5割近くと突出して高いことが判明しました。
1人当たりの飲酒量が多く、従来居酒屋チェーンの成長の原動力だった世代が利用しなくなった理由を探ると対策が見えそうです。
この世代の居酒屋に対する不満点の調査結果では、「うるさすぎる」「店舗・料理に個性がない」という店内の雰囲気や料理の個性に対して不満を感じていることが判明したのです。

団塊世代が居酒屋に求める個性

個性の強さが際立ち、実際に団塊の世代を中心に全世代に人気を博す、日本再生酒場を見てみます。
この居酒屋チェーンは昭和40年代頃までの高度成長期の日本のような、活力溢れる酒場をもう一度、との気持ちで作られたもつやき処です。
群馬県直送の豚のホルモン肉がメイン商品の立ち飲み処で、10坪ほどで月商1000万円を超える店舗も現れ、驚くような売上を記録しました。
昭和30年代のレトロな雰囲気が最大の特徴ですが、現代流行するようなイメージとは異なり、まさに元気のあった昭和を再現した、店の雰囲気も味も、こだわりある懐かしいレトロなのです。
明るい先行きの見通しの付かない現代において、まさに「元気が出る」ということが、居酒屋のキーワードなのかもしれません。