銀行業界について

グローバルな経済環境の変化に敏感な業界

銀行業界の経営状況の推移を概観すれば、業界の大体の現状や動向をつかむ事が可能ですが、2015~2016年の主要銀行約100社の経常収益の合計は約25兆円で、この数年は全体としてみればやや右肩上がりで推移しています。
ただ銀行業界は、時代による経済環境の波を大きく受けることは事実です。

1990年頃にはバブル崩壊に伴う不良債権処理で大きな赤字を出し、銀行間の合併が急速に進み、2007年以降はやや一段落した状況です。
しかし、銀行業界は国内のみならず海外の経済環境の変化にも敏感に影響を受けます。
2007年の米国発のリーマンショックは日本の経済・株式市場にも大きな負のインパクトを与えました。
そのため各銀行は多くの株式評価損を抱え、2009年頃は大手銀行をメインとして巨額の赤字が発生しました。
リーマンショックで巨額の損失を出した大手銀行は安定運用のために日本国債を大量に購入したのですが、2013年以降の日銀の国債大量購入などの金融緩和策で、手持ちの国債を売却するなどして安定した収益を上げています。

日銀の政策によっても影響を受ける銀行の収益

2013年春から日銀は大規模な金融緩和政策に舵を切り、大量の国債を買い取り、資金を市場に流す政策を始めました。
その買取りのスピードは速く、ゼロ金利、又はマイナス金利(銀行が日銀へ預ける預金の金利がマイナス)政策とも相まって、近年、銀行が国債のディーリングで収益を確保する事は困難になってきています。

そのため、2015年の銀行の収益はやや減少傾向に転じ、大手銀行3社(三菱UFJ・三井住友・みずほ)の純利益は2014年比で、マイナス5パーセントでした。
特に、日銀のマイナス金利政策は大きなダメージを与えており、貸し付けたい優良企業は内部留保があるため設備投資資金の需要は少なく、銀行はやや使い道に困っている様子も見受けられます。
ゼロ金利政策が採られているため、連動する住宅ローンも1パーセント前後と低い水準で推移しており、利ざやが縮小して儲けにくい状況にあります。
理論的に金融緩和が未来永劫続けられるはずはないと考えられるのですが、銀行は新たな収益源を見つける局面に立たされています。

地方銀行では再編の波

利ざやは銀行の収益の柱ですので、これが縮小する影響は大きく、業界全体での収益力悪化が懸念されます。
併せて、地方では人口減少が進んでいるため、金融グループ間の再編加速が見られます。
関東南部地方では2016年春に横浜銀行と東日本銀行が統合し巨大なグループとなり、関東北部地方では2016年秋に足利銀行と常陽銀行が統合しました。
九州北部地方でも「ふくおかFG」と十八銀行が経営統合を目指します。
この背景には利ザヤの縮小だけでなく、人口の減少・高齢化、地方経済の伸び悩み等があります。
将来に備え、体質強化を狙っているのです。